喫茶養生記
こんにちは。本日は、「喫茶養生記」についてお話しします。
コロナで自粛期間中、習っていた茶道のお稽古は中止となりましたが、私はこの期間に今までやってきた自身の茶道の稽古を振り返っていました。お稽古ではお点前やお茶をいただくうえでの約束事を学びます。それ自体はとても大切なことであること充分理解していますが、「自分は抹茶そのものについてあまりよくわかっていないのではないか?」と考えるようになり、学生時代に日本史を勉強した時に何となく覚えていた「喫茶養生記」を思い出し、私は「喫茶養生記」が現代語訳された本を買って読んでみました。
「喫茶養生記」、これは鎌倉時代に栄西という禅宗(臨済宗の開祖)のお坊さんが、当時宋という王朝の中国に留学していた時に見聞きしたり経験した茶の栽培法、飲み方、採取法、効能等を記し、その他に桑の飲み方効能を記している養生書で、現代でいうと健康本になります。
「喫茶養生記」の出だしが、『茶は養生の仙薬なり。延命の妙術なり。(中略)・・・其の一期を保つの源は、養生に在り。五臓を安んず可し、五臓の中心の蔵を王とせむか。心の臓を建立するの方、茶を喫する是れ妙術なり。それ、心の臓弱きときは、則ち五臓皆病を生ず。』という感じで始まり、これをわかりやすく言いますと、『茶は養生の生薬であり、長寿のための妙薬である。(中略)・・・一生を健康に保つ源は養生にある。養生は五臓を健全にし、五臓の中でも心臓が一番大事である。心臓を健全にするには、茶を飲むのが一番の妙術である。心臓が弱いと、五臓の全てが病を起こす。』という意味になるようです。この中の「五臓」という言葉ですが、これは「肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓」の5つです。
なぜ、心臓を健康にするのにお茶が良いと言われたのか?そこには中国の思想が深く関係していたようでして、中国の古い経典の中に『肝臓は酸味を好み、心臓は苦味を、脾臓は甘味を、肺臓は辛味を、腎臓は鹹味を好む。』と云うものがあるそうです。ちなみに「鹹味(かんみ)」とは塩辛い味です。この「酸・苦・甘・辛・鹹」の5つを「五味」といい、さらに五味は「木・火・土・金・水」の考えからなる五行思想からなる概念でもあり、中国では古くから五行思想が広まっていました。
「喫茶養生記」では、心臓を健全するにはお茶が一番だと言っています。心臓は苦みを好む。しかし、当時の日本人には苦いものを摂取する頻度が低かったのでしょう。そのため栄西禅師は、お茶を飲むことで日本人に足りていない苦みを摂取して心臓を健康にできると考えたのだと思います。
実際に栄西禅師は、当時の平均寿命が24歳くらいだった鎌倉時代で74歳まで生きたそうですが、禅僧ですので、毎日の座禅で心身を安定させ、さらにお茶を飲むことにより心臓を整えていたのではないかと思われます。
心疾患や老化の防止に有効とされる栄養素に「マグネシウム」がありますが、抹茶にも「マグネシウム」が含まれていることから、私は抹茶が心臓に良いというのも「マグネシウム」が要因かなと思っています。
よって次回は、マグネシウムなど抹茶に含まれている栄養成分と効能についてお話ししたいと思います。